投稿日:2025年3月31日 更新日:2025年3月31日
執筆者:弁護士 弁護士 小田誠
目次
はじめに
2025年3月30日、ロイターや日経新聞などの主要メディアが一斉に報じたニュースが仮想通貨業界に激震を与えました。
金融庁が仮想通貨を「金融商品」として法的位置付けし、金融商品取引法の対象とする方針
この動きが何を意味し、企業や投資家にどのような影響を及ぼすのか、そして同時に検討されている税制改革とは何か。今回は弁護士の視点から、この重要な法改正の全体像を解説していきます。
1. 何が変わるのか?:現行制度と改正の方向性
これまで日本では、仮想通貨(暗号資産)は「資金決済法」のもとで規制されてきました。つまり、決済手段・価値の移転手段としての側面が強調され、証券的性質には十分対応してきませんでした。
ところが現在、以下のような現象が進んでいます:
- 仮想通貨が投資対象となり、価格が乱高下
- ICO(Initial Coin Offering)やIEOによる資金調達の拡大
- 仮想通貨に関する未公開情報の不正利用
こうした中で、既存の金融商品並みに仮想通貨を規制すべきだという議論が強まり、今回の改正検討に至っています。
【図解】仮想通貨の法的位置付けの変遷
年度 | 法律 | 仮想通貨の扱い | 主な内容 |
---|---|---|---|
2017年 | 資金決済法 | 「暗号資産」として定義 | 交換業者に登録制導入 |
2019年改正 | 金融商品取引法 | 一部の仮想通貨を「電子記録移転権利」と認定 | セキュリティトークン規制開始 |
2025年予定 | 金融商品取引法 | 仮想通貨全般を「金融商品」へ | インサイダー規制、表示義務など適用へ |
2. インサイダー取引規制の導入
今回の改正の目玉の一つがインサイダー取引規制の導入です。
仮想通貨のプロジェクト内部情報、上場情報、ハードフォーク情報などを知った開発者・関係者が、その情報を利用して取引することが横行していました。しかし、従来は金商法の「有価証券等」に該当しないため、規制できなかったのです。
改正後は、株式等と同様に、未公開情報を基にした取引は違法となります。
企業・関係者が対応すべきこと
- プロジェクト内部情報の管理体制を強化
- 社内規程の整備(例:トークン取引ルール)
- 情報開示のタイミングと手段を見直し
3. 税制改革の動き:総合課税から分離課税へ?
法制度と並行して進んでいるのが仮想通貨に関する税制の見直しです。
現在、仮想通貨の売買による所得は「雑所得」として**総合課税(最大55%)**が適用されます。これは投資家にとって非常に重い負担であり、日本市場の競争力低下の一因とも言われています。
金融庁・与党が提言した税制改正ポイント
- 仮想通貨取引益を**申告分離課税(20%)**とする
- 損失の繰越控除を可能に
- 少額決済について非課税枠を設定(例:年50万円まで)
これらの改正が実現すれば、株式やFX取引と同等の扱いになり、個人投資家にとって参入のハードルが大幅に下がると期待されています。
4. 今後の法改正・税制改正のスケジュールは?
時期 | 内容 | 概要 |
---|---|---|
2025年夏頃 | 金商法改正案の国会提出予定 | 金融商品としての規制明文化 |
2025年秋以降 | 成立・施行 | インサイダー規制等、企業対応が本格化 |
2026年度 | 税制改正の実施見込み | 分離課税導入、損失控除等 |
5. 弁護士としての所感とアドバイス
この改正は、仮想通貨業界にとって「規制強化」であると同時に「信頼性向上・健全化」の大きなステップです。
今後、発行体・取引所・プロジェクトチーム・投資家のすべてが、従来の証券ビジネスに準じた法令対応を求められることになります。
今から準備すべきこと
- コンプライアンス体制の見直し・整備
- ホワイトペーパーの開示内容点検
- 税務リスクの棚卸しと申告方針の確認
- 外部専門家(法律・税務)との連携体制の構築
おわりに
仮想通貨は「野放し」から「規律ある市場」へと大きく転換しようとしています。
これは単なる規制強化ではなく、日本が世界の中で健全な暗号資産経済圏を築くための前向きな一歩です。
制度改正に振り回されるのではなく、先んじて備えることが、最大のリスクヘッジになります。
ご相談等があれば、当事務所でも仮想通貨関連のリーガルチェックや税務アドバイスを承っております。どうぞお気軽にご連絡ください。
この記事は法令等に基づき2025年3月時点で執筆されたものであり、今後の法改正により内容が変更される可能性があります。