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法律コラム

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フジテレビ第三者委員会報告書が認定した“性暴力”とは何だったのか

――沈黙の構造と、中居氏が守秘義務解除に応じなかった意味

2025年3月31日、フジ・メディア・ホールディングスおよびフジテレビが設置した第三者委員会による調査報告書が公表されました。これは2023年に発生したタレント・中居正広氏と女性アナウンサーとの間の性加害疑惑に対し、事実関係を調査・検証するために設けられたものです。

私自身、これまで企業の不祥事対応や人権問題に関与してきた弁護士として、この報告書は「日本のメディア界における構造的な人権リスク」を浮き彫りにしたものであると考えています。この記事では、報告書の要点を一般読者向けにわかりやすく、かつ法律家の視点を交えて解説します。

原文を読みたい方はフジテレビのHPから読むことができます。
リンクを貼っておきます。フジテレビHP


◆ 性暴力は「行為そのもの」だけではない――報告書が認定した“構造的暴力”

まず報告書が極めて明確に認定しているのは、本件が単なる「不適切な関係」ではなく、「性暴力による重大な人権侵害」であるという点です。これは調査報告書第3章第3節(2)において明記されています。

「女性Aは同意のない性行為を強いられたと一貫して主張しており、精神的に極度のストレスを受けて医療的ケアが必要となった」
「加害行為は個別の暴力としてだけでなく、地位や権力を背景に行われた“構造的な暴力”の性格を有する」(報告書より要約)

報告書が問題視しているのは、行為そのものの有無や合意の有無に加え、「同意が真に自由意思に基づいていたのかどうか」という点です。これは、近年の性犯罪立法や国際的な人権法の潮流にも合致する考え方であり、非常に重要です。


◆ 背景にあった「会合文化」とアナウンサーの脆弱な立場

報告書では、本件が偶発的に起きたわけではなく、むしろフジテレビに長年存在していた“会合文化”の延長線上で起きたとされています。

具体的には以下のような文脈です:

  • 女性アナウンサーが容姿や年齢を理由に、タレントとの会合に半ば強制的に参加させられていた。
  • これらの会合は、番組出演やキャリア形成に重大な影響を与えると広く信じられており、事実上断る自由がなかった。
  • 番組のキャスティングを握るタレントやプロデューサー、幹部社員が、立場の弱い女性アナウンサーを呼び出すという構図。

このような構造のなかで、女性Aが中居氏の所有するマンションで開催された「BBQの会」や食事会に“招かれ”、その延長線上で密室に呼び出されたことが本件の経緯となっています。


◆ 中居氏は「守秘義務解除」に応じなかった――調査の限界

そして、今回の報告書で極めて象徴的だったのは、中居氏が自らや関係者に課された守秘義務の解除に応じなかったという点です。

報告書は以下のように述べています。

「中居氏については、関係者の守秘義務が解除されなかったことにより、当委員会による十分な事実確認が困難であった」(第3章3項(1))

守秘義務の具体的な内容は、事件当日のマンション内での出来事及び示談の内容です。これらについて、被害女性及び中居氏から直接ヒアリングすることはできなかったようです。

法的には、守秘義務解除の同意は個人の自由です。しかしながら、企業のガバナンスやコンプライアンス、そして社会的信頼の観点からは、「調査に応じない」という選択が示す姿勢は、重大な意味を持ちます。

もっとも、第三者委員会は当事者以外の第三者(被害女性から被害申告を受けた医師など)からヒアリングした事実をもとに性暴力の事実を認定しています。


◆ 「被害者は守秘、加害者は沈黙」――この非対称が生んだもの

被害者である女性Aは、事件後に精神的な不調をきたし、入院・療養を余儀なくされました。番組を降板し、最終的には退職に至ります。

一方で、中居氏は番組出演を継続し、フジテレビ社内でも「中居氏の出演継続は契約上やむを得ない」といった論調が支配的でした。実際、CX内部では、

  • 中居氏の希望を受けて番組名を変更(『だれか to なかい』)し、
  • 所属弁護士が示談交渉に関与し、
  • 見舞金の運搬など、番組関係者が私的行動に加担

といった一連の動きがありました(第3章5項参照)。

報告書は、これらを「有力な出演者の利益を優先した構造」と批判しています。


◆ 弁護士としての所感:これは“構造的暴力”の典型例である

この事件は、単に一人のタレントが不適切な関係を持ったという話ではありません。
それを可能にし、隠し、許容し、被害者を孤立させた「企業の構造」「芸能界の慣行」こそが、本件の本質です。

報告書では終盤で「旧ジャニーズ問題」との比較もなされていますが、ここで問われているのは「個人の逸脱」ではなく、「制度と文化が生み出した人権侵害」なのです。


◆ 最後に:真に問われているのは「沈黙の力学」

中居氏が守秘義務解除に応じなかったこと。
女性Aがフジテレビ社内で声を上げた後も、十分な支援が得られなかったこと。
記者会見で「事実未確認」と繰り返された経営陣の姿勢。

これらはすべて、沈黙の力学の中で「加害構造を補強する沈黙」として作用していました。
弁護士として、私たちがこれを看過してしまえば、同じような事件は今後も繰り返されます。

報告書が強調したように、これはフジテレビ一社の問題ではなく、「業界全体の文化・慣行」の問題です。
この報告書が社会的対話の出発点となることを願ってやみません。

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